当研究室の研究テーマ

 本研究室では、生物や人間を模倣した柔らかい情報処理手法であるソフトコンピューティングや感性工学の技術を用いて人間に優しく、優れた対人親和性をもつ人間共生システム人間共存型ロボットの研究開発を行っています。人間とロボット、人間とシステム、人間と環境、などの双方向インタラティブ・コミュニケーションにおける相互作用の解析および親和性の向上を目指した研究を行っています。

Research of Maeda Laboratory

 

これまでに行った代表的な研究テーマ
人工感情モデル 人とロボットのインタラクティブ情動コミュニケーション
性格適応型ロボットによるヒューマンインタラクション
生体情報による指示認識 視点指示認識におけるファジィ顕著性マップに基づく人間の意図推論
視線追跡および筋電計測による全方向電動車椅子の教示支援システム
サウンド生成システム インタラクティブカオスサウンド生成システムICASによるオーケストラ指揮認識
複合生体情報を用いた大規模カオスに基づくリラクゼーションサウンド生成システム
人間の操作特性学習 CMAC学習アルゴリズムを用いたオペレータの操作スキル学習
ファジィニューラルネットワークを用いた熟練者の操作ルールと習熟プロセス獲得
ハイブリッド進化計算法 ファジィ適応型探索ハイブリッド進化学習アルゴリズム
人工蜂コロニーモデルに基づくハイブリッド生物群知能アルゴリズム
知能ロボット制御 マルチ全方位ビジョンを搭載したサッカーロボットの自己位置同定
調教理論に基づく自律移動ロボットのShaping強化学習
自律分散システム マルチエージェントロボットにおける協調行動学習
マルチエージェント強化学習に基づくソーシャルインタラクション

人間共生システム(Human Symbiotic Systems: HSS) とは?

 近年、「人間」との共存やインタラクションが重要視されるようになり、「環境」だけではなく「人間」との相互作用が研究の中心課題となりつつあります。従来のロボットは「環境」とのインタラクションのみを考慮した機能があれば十分であり、人間のほうがロボットの機能や特徴を理解し、ロボットに合わせてきました。しかし、我々の身近にもロボットが増えつつあり、これからは人間との共存を考えれば、人間の意図理解や人間への意思伝達などのロボットによる「人間」とのインタラクションが欠かせません。

 そのため、人間とロボット(HRI)、人間とコンピュータ(HCI)、人間とエージェント(HAI)などの双方向コミュニケーションにおけるヒューマン・インタラクションを中心課題とし、人間と共生・共存できるシステムの実現に必要な要素技術の確立を目指した「人間共生システム」研究が、多くの研究者により学会横断的に進められています(図1)。本研究室でも、人間と知的システムの相互作用および双方向対話、コミュニケーション・ロボット、インタラクティブシステム、人間協調システム、ソーシャルエージェントなどの人間共生システム研究を幅広く行っています。

HAI(cut)

図1.本研究室の人間共生システム研究

 「人間共生システム」研究においては、図2に示すように人間とコミュニケーションを行う知的対象物として、エージェント、ロボット、コンピュータ、システム、人間(ヒューマンコミュニケーション)など様々なものが考えられます。このような知的システムと人間とのインタラクションの設計は、知的システムとそれを取り扱う人間との双方向のやり取りを実現する仕組み、およびそれらを促進する手法の設計であり、人間に優しいシステムを構築する上で極めて重要な研究分野です。従来のヒューマンインタフェース技術の構築においては、人間工学、感性工学などの技術が必要とされましたが、これらに加えて、双方向インタラクション技術構築のプロセスでは、認知科学、行動心理学、知識情報処理など広範な領域の技術が不可欠となります。

HSS Research

図2.人間共生システムにおける重要な研究テーマ

 人間と共生する知的システムには、図3のように「自律性(autonomy)」と「親和性(affinity)」が必要です。これまでのコンピュータやロボット工学では、環境に適応しながら「いかに人間に近い知能を搭載できるか?」をメインテーマとして研究開発を進めてきました。しかしながら、このような自律性を有するコンピュータやロボットが社会に溢れ出すと、人間との「共存」や「共生」が問題となり、そうなれば人間に対する「親和性」が重要な課題になります。ところが、これまでの研究は知能化に終始するあまり、人間に対する親和性や人間との協調に関しては、まだ未解決の問題が数多く存在しています。この「自律性」の研究から「親和性」の研究に比重が移りつつあるという傾向は、コンピュータ、ロボット、人工知能などあらゆる分野において連鎖的に起こっており、当研究室では知的システムから人間共生システムへのパラダイムシフトが重要であると考えています。

HAI

図3.人間共生システムにおける自律性と親和性